Inlight Education

記憶について

2015/01/12


記憶の形成における3つのステップ

    人間の記憶のProcessは、「記銘」(Encoding)、「保持」(Storage)、「想起」(Retrieval)の、3つの段階によって作られます。
そして、この3つをバランスよく鍛えることで、記憶は年齢に関わらず強化することができます。

短期記憶は ”かたまり” で覚える

    人間は、一度覚えてしまったものは、なかなか忘れることはありません。したがって、物事を記憶するには、まずこの「記銘」(Encoding)をする必要があります。これは、携帯番号、暗証番号、メールアドレスや人の名前などの単純暗記のことです。

    認知心理学者である George A. Miller は、「The Magical Number 7 ± 2」 という論文を発表しました。これは、人間の短期記憶であれば、5桁~9桁の数字をまとまりとして記憶できるというものです。これを、ワーキングメモリー(Working Memory)といいます。ある作業をしながら短期的に保持している記憶がこれです。
例えば、数学の問題を解いているときに、途中で算出した値や、作業の流れ、ピアノなどの初見演奏、人との会話などです。そして、これはトレーニングによって鍛えることが可能です。

    ここで重要なのが、単純記憶の場合は、一つひとつの情報を独立させたまま覚えるのではなく、ある ”かたまり(chunk)”として記憶することにあります。円周率100桁を、100の数字の順番で記憶するのではなく、仮に4つの数字のまとまりで記憶すれば、20個の塊を覚えることで済んでしまいます。もう少し実用的な例でいえば、人の名前などは、名前だけを覚えるのではなく、苗字も一緒に覚えることによって、顔と名前がより覚えやすくなります。

    「銘記」という日本語は、元の英語である Encoding の日本語訳です。 Encode するとは、”暗号に書き直す” ことを意味する言葉です。この言葉からも分かるように、記憶するには、自分の中で意味を持つものとして解釈する必要があるということです。そうして、別の記憶と関連付けされていくことで、短期記憶が強化されていきます。

    何度も覚えようとしても覚えきれないようなものというのは、このEncoding が上手くいっていない場合です。無機質なものほど覚えづらいので、覚えにくいものは、やはり、”一体それがなんなのか” という意味が理解しきれていない証拠でもあります。覚えられないことに関係している他のものとの関連性の中で、そのものの意味を見つけることもできるので、分からないものは、考え、調べ、適切な人にきくようにしましょう。

記憶の「保持」とエピングハウスの忘却曲線

    人間は一度覚えた記憶でも、時間の経過とともに、忘れていくことができます。

    「銘記」した短期記憶を、中期記憶、長期記憶へと「保持」(Storage)するためには、同じものを繰り返し覚える頻度を増やさなければなりません。

    厳密には右の表とEbbinghauseの実験は異なりますが、分かりやすく説明されたのが、表の中の青文字です。ドイツの心理学者、Hermann Ebbinghause は、意味を持たないアルファベットの綴りを用いて、この中期記憶を検証する実験をしました。

    一度銘記した記憶であっても、1週間語には、25%以下しか残っていません。

    しかし、これは一度記憶した後、何もしなかった場合です。一定の時間をあけて繰り返し記憶することにより、この曲線がなだらかになり、忘れにくくなります。
また、記憶に必要とする時間も節約されます。

    つまり、英単語などを単純に暗記する場合は、勉強時間の長さと量よりも、それを繰り返す頻度の方が重要になってきます。

    英単語100個を一度に覚えて、1週間語に25個しか覚えていないよりも、50個を4日間連続で学習すれば80%記憶に残るので、40個の英単語は確実に覚えることができます。残りの3日でまた次の50個を覚え始めれば3週間で約200個程度の英単語は覚えられるでしょう。

    これは、単純暗記の話なので、関連付けの記憶などを考慮すればもっと効率よく学習することができます。

    勉強は、量よりも質、時間よりも回数です。

    ちなみに、Ebbinghause は、認知心理学の研究も行っていたようです。

錯視(Optical Illusion)でよく目にする右のようなものも、Ebbinghauseが発見しました。錯視は、英語の長文のトピックでしばしば見かけます。英語の教科書にも掲載されていたと思います。トピックとして、錯視の知識は学習しておきましょう。
※ 右図の真ん中の黒丸の大きさは、左右どちらも同じ

記憶は、思い出さなければ、いずれ忘れてしまう

    一度 Inputした記憶を思い出すことを、専門用語では、「想起」(Retrieval)といいます。想起には、「再生記憶」と「再認記憶」の2種類があります。

    「再生記憶」とは、あるときふと懐かしい香りを感じたり、たまたま街で流れている音楽を聞いたりしたときに、自然と思い浮かんでくる記憶です。

    「再認記憶」とは、意図的に思い出そうとして思い出すような記憶です。普段の生活で(学習においても)記憶力が良くなった・悪くなったと感じるのは、再認記憶がどう機能しているかによります。

    短期記憶は20秒~1分以内、中期記憶は9時間以内しか覚えていられない一方で、長期記憶は一生覚えていることができます。短期記憶を中期記憶に、中期記憶を長期記憶にしていくには、先にも述べた通り、その時間内に繰り返し復習することが必要です。一生覚えていられるといっても、想起する(思い出す)頻度が少なくなれば当然思い出しにくくはなりますが、一度長期記憶となってしまえば完全に忘れてしまうまでにはかなりの時間が必要ですので、あまり心配はいらなくなります。

例えば、日本で生まれ育って、10年以上海外にいれば当然日本語を忘れてしまいますが(使用頻度が減るから)、日本に戻ってくれば、またすぐに思い出して、問題なく生活できます。(50年、60年日本を離れていれば話は別です。)
長年やっていたスポーツなども同じです。

    また、復習の頻度を下げたとしても、想起する回数を増やせば、記憶はより強固になります。ニューロンとシナプスの話などは、小学校か中学校のときに、国語の授業で学習したはずです。(知らないのであれば、調べてみましょう。)

    工夫して記憶するテクニックは色々あり、個人によってどの方法が最も効果的かというのは様々です。しかし、どの方法をとっても、今回説明したような記憶のメカニズムは、変わりません。基本は、繰り返しと頻度、理解と意味付け、関連付けです。

    次回は、具体的なテクニックについて解説していきます。

To The Top